原発事故被災者手記
馨(けい)の放射戦記

4人の子供と母親の原発事故との戦いの記録

No.14

2012/06/09

出来ることを続ける

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「避難」と言う言葉は、震災から1年以上も経つとあまり言いたくありませんが、今も避難生活が続いていることを、世間は忘れてしまってます。

避難者もこれだけ時間が経てばいい加減普通の暮らしがしたいですし、自ら忘れさせてしまってるのではないかと言われたら、そうかもしれません。

18歳未満は「放射線管理区域」と言われる土地にはいられないはずなのに、マスクも強制されずに普通の暮らしをさせられているのですから、慣れ、麻痺して、危機感も何も感じなくなります。

役所も、マスクの強制はできないそうです。せめて18歳未満だけでもとお願いしても、できないそうです。親の責任で何とかしてください、だそうです。中高生は、言うことを聞く子ばかりじゃありません。

何故こんな最低限のことが出来ないのか、理由が全く理解できませんが、まさかいまだに政治家や公務する人間は法律を無視していると言うことに気がついていないのでしょうか。見て見ぬ振りなのでしょうか。本当にがっかりしますが・・・。

今私は、子ども達を放射線管理区域から避難させてほしいという署名活動、関西で立ち上がった市民測定所のお手伝い、原発に意識を持っていただくためのプロジェクトの呼びかけ、福島原発事故により被害を受けた人達で動き出した「告訴」と言う手段など、様々な部分から、今の自分が出来る範囲で出来ることを続けようと心に決め、毎日意識しながら生活しています。

いくら普通の生活をしたいと思っても、例えば近くのスーパーでサービス業とか、どこかの会社の事務とか、仕事はやる気さえあれば出来るはずなのですが、気持ちが落ち着かなくて仕事に集中できません。支援や被災地のための仕事なら出来ると思います。

私が福島から出た一番の理由は、動かなければ何も変わらないと思ったから。もし普通に生活したいからといってそのまま福島にいたら、もうだんだん疲れてただ泣き寝入りするしかなくなってしまうと思ったから、福島からまず出なければいけないと言う気持ちになったのです。福島に住む人でもいろんな考えの方々がいると思うのですが、少なくとも子どもがいる人は、同じ思いを抱えていると思います。ただそれを口に出していえない、行動に出せないだけで。

日々これだけ電力会社とこの国のいろんな実態が明らかになっているのです。何も感じない人のほうがおかしいですよね。

今年5月、日本のすべての原子力発電所が止まりました。

私達を支えてくれている大先輩、福島の女たちの一人のお母さんの「原発は止まったのではない、私達が止めたんだ」と言う言葉には、大きな意味があると思っています。一人一人が「止めるぞ」と考え行動すればできるんだと、これから先行動する人々にも伝えたいと言う思いがある気がします。

しかし問題がこんなに山積みなのに、この国もおおい町の人々も、福井の大飯原発を稼動させるつもりでいるなんて、呆れて言葉も出ません。土壇場になって責任の擦り付け合いをして、限定的とか暫定的とか言葉遊びしながら政治を推し進めるのが野田政権、責任をどうとるのかを述べてから物事を進めてほしいです。さらに電力会社は電気料金を値上げし、私達からさらに巻き上げようとする姿勢は腹立たしくなる一方です。

今まで私達は、こうして平和に生かされてきました。しかし、おかしいという気付きがあった人達は、いろんなところからSOSを発信していました。それに興味を持つこともなく、どうして今までいたのだろうと、つくづく自分でも情けない気持ちになりますが、私の場合、当事者にならなければ気がつかない人間でした。

例えば私が独身だったら、きっと福島で何も考えずに暮らしていたかもしれないんです。

自分は子どもがいたから、ただそれだけが気持ちを動かしただけなのです。それを考えると、子どもにも感謝すべきなのかもしれませんが、今まで気付かなくて申し訳ない気持ちのほうが遥かに大きいです。

私の母は、50代過ぎてから、仕事で生活習慣病などの勉強をしていました。母も私もアレルギー体質、弟は喘息を持っており、石油製品から学び、人間にとって有害な物質が世の中に多く蔓延していることを知り、私に教えてくれていました。

しかし私は、あまり強く言う母をうっとおしく感じていました。そんなこと言われたって、通常販売しているものは安いし、いい香りがするし、ちょっとぐらいなら大丈夫と言う甘い考えでいました。現実問題、高いお金を掛けることは困難ですから、そっちにお金をかけたら食べていけなくなる、今の福島と一緒です。

でも、母は日々私に教えてくれました。生活習慣病予防士の資格も取得しましたから、よっぽど危機意識があったのだろうと思いました。

普段生活する中で私達人間が身体に取り入れている有害物質は1年間に3kg~4kgと言われているそうです。一体それがどんな影響を及ぼすのかは、漠然と「有害なものは身体によくない」と思っていても、はっきりしたことは解りません。

皆同じ食べ物を食べているわけじゃないし、皆同じ日用品を使っているわけじゃない、生活環境も体質もみんな違うのですから、例えば何か病気になったとしても、どれが原因かなんてよく調べなければわかりません。すべての条件を揃えなければ比較も容易ではありません。長期に亘る人体実験など到底無理です。どこか具合が悪くなれば病院にいくしか方法がありません。そして医師達は検査し、データを取り、まず対症療法で症状を抑えることが主な治療でしょう。もちろん医者によって診察や治療の仕方は様々でしょうが、何が原因かわからない症状は後手にまわり、すべては「自己責任」なわけです。

解っている人は自ら自然なものだけしか使っていない品物を選びます。そしてなるだけ病気にならないような対策を考えます。それを教え伝え続け、受け入れる人は受け入れ、耳を塞ぐ人は有害なものを死ぬまで摂取し続けます。その人の遺伝子は受け継がれていきます。誰も教えてくれないのではなく、聞く姿勢と想像する事を常に意識しなければいけないとつくづく思います。

有害なものと言っても、一つ一つに入っている割合は少ないかもしれません。法に基づいている範囲であれば、いくら有害でも入れていいことになっているのですから、コストを減らし大量生産するにはどんどん使います。お金優先で考える人間はそれが人々にどんな症状が出るかなど考えもしません。法で決まってるんですから。誰かが「それはまずいんじゃないか」と声をあげようものなら命を狙われてしまうぐらいの組織が日本にはいくらでもあります。誰もが知る大手企業など、平気な顔で提供していることを、国民はもっと知らなければいけません。

それと同時に、私達人間の身体の状態が変化しつつあることも、胸に留めておくべきではないかと思います。自然なものを使って身体に変化が起こるのは何故か、そもそも花粉も食べ物もずっと前から人間が付き合ってきたもので、それに対しアレルギー反応があるのは、自然界のものよりも人間側に原因が多くあり、身体の構造がだんだん敏感になってしまっていることにもっと目を向けるべきではないでしょうか。「花粉症」などと、花粉は言われたくない、花粉は何もしていないのに、何で言われなくちゃいけないんだよって思ってるはずです…。

いくら母をうざがって居た私でも、そういった事実を知り、少しずつでも変わらなければと気持ちが動いていきました。

私は何年も皮膚科に通っていた時がありました。病院も何箇所も変えました。主に顔や瞼に症状が出るのですが、殆どは皮膚の上から塗る薬を処方され、結局繰り返し酷くなる一方で、看護士の友人にも相談したりして、長く通った病院では内服薬も一緒に処方してくださったので、一時落ち着いてきたのですが、「病院に通い続ける」ことがずっと引っかかっていました。症状がまた出るたびに通院、すると、薬の量が増え、そして注射までするようになりました。
「おかしい・・・。」
とずっと思いながらも、医者を信じていました。

そんな中、母の教えてくれたことが重なり、私は病院に行くのをやめ、薬もやめました。本当は危険なので医者などはやってはいけないと言うかもしれませんが、結局は自己責任だから誰にも言われる筋合いはなく、仕事を辞めた時期に、人間の身体が本当に必要とするものをサプリメントで補えることを知り、それが本当なのかを本を読んで確かめた上で、その時の普通の生活に取り入れていきました。

半年の間でしたが、自分で人体実験をしていろんな事が起こりました。

飲み始めてから一週間後、真っ黒い便が出ました。それから、徐々に辛い症状が続き、外に出られないぐらい、酷い時は顔が全部火傷をしたかのような痛みを伴いました。母にまで「やっぱり病院に行ったほうがいいんじゃないか」と言われるほどでしたが、私は絶対に行かないと、行ったらまた同じ繰り返しだと思い、我慢しました。相談できる医者が九州にいることを私は本を読んで知っていましたので、何とか我慢できるまでは続けたいと思っていましたが、繰り返し長く続く痛みに限界が来て、九州まで電話をしました。先生は直接電話口に出て、私の話をはじめから色々聞いて下さいました。今の症状を自分で絵に描き、説明を入れて、FAXで送り、先生からの便りとアドバイスを頂き、気持ちが幾分落ち着きました。良くなったり悪くなったりを繰り返し、少しずつ炎症が落ち着き、炎症が酷かった部分が瘡蓋になり、自然に剥がれ落ち、その痣も、少しずつですが消えていったのです。

それどころか、肌や身体の調子が以前よりもよく、若い頃の肌に戻ったようにきれいになったのです。いつも繰り返していた痒みもなく、それには母も私も、もちろん周りの人もびっくりしていました。

これは危険を伴うので絶対に勧めませんし、薬を投与したり有害なものをとり続けている人、例えばアトピーが全身にあって酷かったりする人などは、命の危険に関わる可能性もあるのでやってはいけません。

いきなりこんなことを私がしたのは、疑問がたくさんあったから、自分で確かめたかったのです。自らやってみて実感し、見えてきたものがありました。素人がこんなことをすること自体問題なんでしょうが、私自身、疑問を抱え続けるほうが嫌でしたから、納得するためにはこうするしかありませんでした。

サプリメントは安価なものではないのですが、だからと言って安くて添加物が混入したサプリメントなど論外です。成分表を良く観てほしいです。むしろ「栄養補助食品」とは言えないはずなのに、一般にそういった商品が出回っていることもよく知り考えてみてほしいことです。

そして野菜に栄養が無いから質のいいサプリメントを摂ればいい、そうではありません。本来は栄養がある食べ物だけで十分に身体を整えることが可能なはずなのです。野菜に栄養をというふうに考えなくてはいけないんです。そもそも野菜に栄養が無くなったのは何故?と考えるのが本当です。

こうした環境の中、新たに「放射能」が加わってしまいました。さらにもっと厄介になってしまいました。海外から厳しい視線が送られていること、いい笑い者になっていることを、日本の殆どの人は気付いていません。平和過ぎるのも程度があると思いますね。

江戸時代にはエコな暮らしをしていたと言うテレビ番組を、先日子ども達と一緒に食いついて観ていました。普段から身の回りに何でもあるから、その生活に溺れてしまってますが、今まで忘れ去っていたものを思い出し、呼び起こさせてくれるようなテレビや報道ならば、どんどん見聞きしたいし子どもにも観せたいと思います。それで世の中が変わってくれるなら、世論が動くのならという期待を、マスコミ側が持っているのだとしたら、何より嬉しいことです。

ならばより一層、大事なことを、もっとどんどん伝え続けてほしいと願います。

マスコミの人達も被害者である人だってたくさんいる、伝えきれない部分もあるのかもしれませんが、決して怯むことなく声をあげ続けてほしいです、私達と一緒に。

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